ニューヨークから鹿児島へ。人生の多くを過ごした都会から、突然の田舎暮らし。
「還暦を迎えて帰国する際に、どこへ帰ろうかな...と日本地図を広げたんです」と高橋さん。
大学時代は北海道で過ごしたため、雪の降る地域は除外。
仕事が無ければ、年齢的に都会での暮らしはコストがかかり過ぎる。
消去法で候補地を4つに絞り、まず訪れたのが鹿児島だった。
縁もゆかりもなく、友人の友人のつてを頼り、鹿児島空港に到着。
「その15分後には温泉に入っていました。
こんなところ他には無い!と思って。一目惚れですよ」。
東京へ出かけることも多いため、空港にも近い隼人町日当山で中古住宅を購入し、現在まで2年半を過ごしている。
高橋さんの日常はごくごく普通。
朝起きたら食事の用意をして食べて片付け、を日に3回ほど。
掃除や洗濯など、単身で暮らしているため家事が仕事と言ってもいいくらいだ。
農作業や釣りは?と尋ねると「ご近所から分けてもらえたりするので」とにっこり。
積極的な近所付き合いはしていないそうだが、顔を合わすと挨拶をして時には立ち話も。
別れ際に「じゃぁこれ持って帰ってね」という感じで旬の野菜や魚が食卓に並ぶ。
時には調理済みのものもお裾分けでいただくとか。
「移住を決める前に、鹿児島は閉鎖的だと友人から忠告があったんですが、私の感想としてはオープンで素敵な人が多い。こればっかりは住んでみないと分からないもんですね」。
また、時間があれば読書をしたり、散歩にも出かける。
3時間ほどかけてお気に入りのあぜ道や川沿いをのんびりと歩いて過ごしたり、霧島連山をトレッキングしたりすると、あらためて霧島の美しさや魅力に気付かされるそう。
「豊かな自然だけじゃなく、神話や歴史が色濃く残っているのも、この土地の面白みです」。
昨年8月には、霧島高千穂リゾートランドに別荘を建てた。
日当山は里の家、別荘は山の家と呼んで、心の趣くままに2つの家を行き来している。
特に、三角形のフォルムが目を引く山の家は、立地や景色、設計デザインと細部にまでこだわりが詰め込まれている。
玄関からリビングまでの廊下は、霧島アートの森(野外美術館)で出会った作品にインスピレーションを受けて取り入れたもの。
四角いチューブのような廊下を抜けると、パッと視界が開け、森の緑に縁取られたパノラマの風景が現れる演出。
景色を存分に楽しめるようにベランダも広め。
しかも露天風呂まで設えてある。
鹿児島の温泉に魅了された高橋さんらしいこだわりだ。
悠々自適で不自由も無いような高橋さんだが、ちょっとした悩みもあるそう。
それは"方言"。
「1対1で話しているとまだ聞き取れるんですが、地元の方が2人、3人と増えてくると、何を話しているのか分からなくなります(笑)」。
そんな異国情緒も日々の刺激にしながら、霧島での暮らしを楽しんでいる。